最後まで読んで思ったのだが、途中から読むのがしんどかったな・・・と言うのが正直な感想である。
内容は非常に面白いのだが、骨董業界の嫌な部分のみを書き出したようで気が滅入ってしまった。
特に旗師の女房が乳ガンになってしまう下りなんか、生々しくて私自身が参ってしまい、暫く読むのを止めてしまった位だ・・・
私事ではあるのだが、母親が乳がんになってしまい、去年亡くなったばかりだったので色々な事を思い出してしまった。
ストーリーは、それぞれに個性のある数人の主人公の視点から物語が進んでいくのだが、最後は誰も幸せにならない。
主人公によっては、いわゆるバッドエンディングです。
●信じていた女房が寄宿先の息子と浮気し、ばれたら失踪して、夫は別件で逮捕とか・・・
●旗師の女房が乳がんになり、夫は治療費のために詐欺して逮捕とか・・・
とにかく救われない。
旗師の所持金がガンガン減っていく様なんか我が事の様にヒリヒリしてしまったよ。
挙句に車購入のダメ押し・・・もうね何も言葉が出ない。
主人公らが商うのは超一級の骨董品ではない。
二~三級位の品を扱う、何処にでも居そうな骨董商である。
逆にそれが生々しい。
本書内で「わし等はマグロみたいなもんや」と言う台詞がある、仕入れして販売し続けなければ死んでしまうとの比喩であるが、なかなか的を得ている。
でも骨董業界人の真の姿を書き出したのかもしれない。
本書の中には骨董業界の裏方とも言える方々が出てくるが、中々興味深い、色々な人の手を経て一般人の手に渡るのだなと再認識することも出来た。
全ての登場人物に言える事かもしれないが、何故この仕事を選んだのか?そう聞くと、恐らく「自分が感動する品を商いたいから」と言いそうな雰囲気である。
勿論彼らはコレクターではない、商売人なので、手に入れた品を販売しなくてはいけないのだが、全編に渡ってその前提は崩れることが無い。
全編に渡り、人と人の欲をごちゃ混ぜにして擦り付け合う様なドロドロとした内容だが面白い事は間違いない。
鬱展開が嫌いな方は、読み進めるのに多量のエネルギーを必要とするだろう。
あとがきにも書いてあるのだが、筆者は本書執筆にあたって骨董商や周辺に取材したそうだが、話を聞けず苦労したそうだ・・・
そりゃそうだ、誰もそういう話は話さないよ、クリーンな業者はそういう話自体詳しくないだろうし、ダーティ(笑)な業者は絶対に話さんだろう・・・(無知を装って適当に誤魔化されるのが落ちでしょ)
しかし、こういう胡散臭さ、人と人が織り成すドラマも骨董の楽しみでもあるのは否定出来ない側面であると思う。
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