孤高の人 全17巻 坂本眞一 (著), 新田次郎 (著)
巷に登山漫画の名作は多数あるが、今回は山岳漫画の名作「孤高の人」の感想を書く。
登山を題材に漫画にしたものは沢山あるが、そのTOP3を選べと言われたら多くの人が選択しそうな作品である。
しかし他のレビューを見ても否定的な意見は一定数あり、好き嫌いがはっきり分かれる作品とも言えます。
この作品は前編と後編で作風が違うし、主人公に感情移入できないとも言われ評価が分かれる所以でもある。
実在の登山家をモデルにしているが、原作は昭和初期に実在した孤高の登山家・加藤文太郎をモデルにした山岳小説です。
ちなみに小説と漫画は時代も違うしストーリーも違います。
漫画に話を戻すと、主人公は強烈なコミュ障で独りを好む性格なのだが、中盤あたりは陰湿、陰鬱な人物が多く登場し、人の汚い所を凝縮して表現したような場面が多数あり心をえぐられます。
高校時代の友人が手段を択ばないクライミングをして、文太郎の金を盗む姿は切なすぎて心が痛い…
高校時代のアイドルポジションの子は風俗嬢になっておりヤリマン化、しかも同じく文太郎の金を盗むという…
文太郎、金盗まれ過ぎ。
同じ山岳漫画の「岳」とは正反対と言ってもいいだろう。
「岳」の主人公である島崎三歩は、明るく陽気で誰とでも仲良くなれる人物だが、「孤高の人」の主人公である文太郎は後半では幾分かマシになるが、暗く、独りで、自分の意見も言えない様な人物に描かれている。
昔の登山界では「ソロ」「単独行」は危険という代名詞であり、クライミング界隈では言わずもがなである。
ソロ、単独行は今でこそ雑誌で特集されたりしているが、20年位前では考えられないのではないだろうか?
序盤で「街の明かりを見て安心する人間だけじゃねぇんだ」との台詞があるが文太郎という人物を簡潔に表した表現だと思う。
序盤の文太郎は孤独だ…
孤独は嫌なのに他者と相容れない様子が描かれている。
後半の文太郎は結婚して子供もいるが孤高の存在になっている。
孤高と孤独は違う。
前半の文太郎の対比として、後半の文太郎は嫁が居る自宅の明かりを見て安心する様子が描かれている。
イカレ気味のパートナーと一緒にK2に挑戦するがその結末は…?
興味を持った方は是非漫画を読んで頂きたい。
登山する人、しない人、万人におすすめ出来る名書です。
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